このサイトでは悩める先生方に、非常勤講師として働くことをおすすめしています。
ですが、非常勤には「使い捨て」や「低待遇」といったマイナスのイメージがあるかもしれません。
わたしは常勤講師として2年、正規の教員として10年間小学校で勤務してきました。
2023年からは非常勤講師として小学校で週に10時間勤務しています。
この記事では、わたしが実感している非常勤講師のメリット、デメリットについて解説します。
デメリットやメリットを知った上で興味を持った方は、非常勤講師も検討してみてください。
非常勤講師と常勤講師の違い
非常勤講師のメリットとデメリットを解説する前に、非常勤講師と常勤講師の違いについて解説します。
常勤講師は正規採用の先生と日々の勤務条件はほぼ同じで、子どもや保護者からも判別はつきません。
反対に、非常勤講師は学校にいる時間も短く行事に関わることも少ないので、フルタイムの先生との違いが分かりやすいです。
非常勤講師 | 常勤講師 | |
---|---|---|
勤務時間 (1週間) | 10〜29時間程度(自治体による) | 38時間45分 |
勤務時間 (1日) | 〜6時間 | 7時間45分 |
給与体系 | 時間給 | 月給 |
ボーナス | 条件を満たせば期末手当あり | あり |
社会保険 | 条件を満たせば共済組合、厚生年金に加入 | あり |
雇用期間 | 1年以内 | 1年以内 |
担当する仕事 | 授業担当 特別支援学級担当 新任指導など | 担任(特別支援学級含む) 教科の専科 習熟度担当など |
雇用期間がどちらも1年以内なこと(継続はあります)は同じですが、勤務時間や担当する仕事は全然違います。
給料や社会保険の面でも違いは大きく、常勤講師はボーナスももらえます。
非常勤講師のメリット4選
非常勤講師には、4つのメリットがあります。
最後のメリットは、主にこれから教員を目指す人にとってのメリットです。
1つずつ詳しく解説します。
業務が少なく時間にゆとりのある生活を送ることができる
非常勤講師の最も大きなメリットは「時間に余裕があること」です。
非常勤講師の仕事に含まれるのは、授業とその準備や評価に関わる時間で、その他の仕事はほぼありません。
先生は多くの業務に忙殺されるので、授業関係以外の業務がないのは本当に助かります。
わたしの経験から小学校教員の仕事の例をあげてみます。
- 小学校教員の仕事例
- ・授業(小学校で6時間授業であれば8:45〜15:30程度)
・授業の準備、教材研究
・テストの採点を含む評価
・生活指導
・保護者対応
・校務分掌(学校内の仕事の割り振り)
・プリント印刷
・行事の準備
・タブレット端末の管理
・手紙の配布、アンケートの回収
・宿題チェック
・・・・・etc.
他にも、地域からの苦情への対応、放課後家に帰ってない子どもの捜索などが加わるときもあります。
これでは余裕が生まれるわけがありません。
一方、非常勤講師が担当するのは上の黄色マーカーの部分だけです。その差は歴然ですね。
時間に余裕ができるので、他のことに時間を使えるようになります。
- 家族と過ごす時間を増やすことができる
- 読書や資格取得など自己投資の時間がとれる
- 副業やアルバイトと掛け持ちができる
- 睡眠時間を増やしたり運動したり、健康のために時間がとれる
非常勤講師になって実感するのは、時間に余裕があることの素晴らしさです。
フルタイムで働いていると、毎日の業務や行事予定に追われて、気づけば1年が過ぎていきます。
そんな毎日から解放され、じっくり物事を考える時間が取れる、これ以上のメリットはありません。
副業ができる(営利企業等への従事制限がない)
非常勤講師は常勤の講師とは違い、営利企業等への従事制限がありません。
「営利企業等への従事制限がない」とは、平たく言うと「副業してもOK」ということです。(自治体によっては労働時間の管理のためか、届出や報告が必要な場合もあります)
これは常勤の公務員にはない、非常勤講師の大きなメリットの一つです。
知っている方もいるかもしれませんが、公務員はサラリーマンと違って法律で副業が禁止されています。
許可を得れば認められる副業も一部ありますが、ほぼできないと思ってください。
ですが、非常勤講師にはその制限がありません。
公務員として守らなければならない義務はありますが、その範囲の中であれば他の仕事をしても大丈夫です。
働く時間をコントロールできる
非常勤講師は、講師登録をするときや配属されるときに、こちらの希望を伝えて勤務時間を決めることが多いです。
週に何日働くか、1日に何時間働くかはある程度自分でコントロールできることになります。
例えば午前中だけ働くのも可能ですし、週に2日か3日だけ働くのもOKです。
もちろん希望が全て受け入れられるかは分かりませんが、調整できるのはメリットと言えるでしょう。
正式に採用される前に経験が積める
これは上の3つとは逆に、今後正採用を目指す場合のメリットです。
教員として働きたいが、いきなりフルタイムで働く自信がない。もしくは採用試験に落ちたので経験のために講師をしたい。
そんな人には非常勤講師がおすすめです。
金銭面を考えると初めから常勤講師になるのもいいですが、いくつか心配な点があります。
- いきなり担任を任されることがある
- 講師なので新任のための研修は対象外
- 担任になると他の先生の仕事ぶりが分からない
常勤講師になると担任を任される可能性があります。
もちろん面談で希望を伝えることはできますが、勤務する学校の状況によっては希望が通るとは限りません。
わたしの場合、常勤講師1年目は算数や書写の担当で担任ではありませんでした。
そのおかげで他の先生の担任としての動きを見ることができました。
初めから担任になってしまうと、スタートから全開で業務に追われます。
非常勤講師は担任をする心配がないので、じっくり他の先生の様子を見ながら今後について考えることができます。
非常勤講師のデメリット4選
非常勤講師にはデメリットもあります。
わたしはデメリットは他のことで補えるし、メリットの方が大きいと感じたので非常勤講師を選びました。
ただし、家庭の状況や年齢、将来自分がどう生きたいかによっては、常勤講師や正採用を目指した方がいい場合もあります。
これから解説するデメリットを理解した上で、非常勤講師を検討してみてください。
デメリットは以下の4つです。
雇用が不安定
非常勤講師は会計年度任用職員の名称の通り、「会計年度」つまり年度ごとの契約です。
長くても1年で契約は切れ、次年度はまた再契約になります。引き続き働けることもありますが保証はなく、公務員といえど不安定な働き方といえます。
ただし、これは常勤講師にも共通していることです。
非常勤講師で問題なのは、そもそも希望する自治体で非常勤講師の採用があるかどうかが分からないことです。
採用があるかどうかは勤務する自治体によりますので、希望する自治体の募集状況をこまめにチェックしてください。
常勤に比べると低収入
非常勤講師の時給は低くないですが、年収で考えるとやはり低収入です。
仮に時給3000円で週に20時間働いたとすると、3000円×20時間×35週=210万円
これに期末手当がプラスされますが、決して高いとはいえません。
また勤務時間によって毎月の収入が変わるので、夏休みや冬休みのある月は収入が減ります。
ただし、他の収入源を作ることである程度は補えるので、デメリットと感じない人もいるかもしれません。
わたしの場合は、自由な時間が増えるメリットの方が大きいと感じています。
社会保険に入れない場合もある
少しずつ非常勤講師の待遇も見直されてきていますが、社会保険の面では常勤の職員とは差があります。
勤務時間が短いと社会保険には加入できないので、自分で国民健康保険と国民年金に加入しなければなりません。
年度初めに社会保険料や住民税の支払いがあるので、準備をしておいてくださいね。
ただし、一定の要件を満たすと社会保険に加入することができます。
例えば、大阪市の講師募集の資料には次のような記載があります。
令和4年10月以降、本市学校園における会計年度任用職員(他職種との兼職を含む※)として、週当たりの勤務時間数の合計で20時間以上となる任用期間が2月を越える場合、公立学校共済組合の組合員となり、健康保険は公立学校共済組合、年金制度は厚生年金(日本年金機構)が適用されます。
大阪市の講師概要
つまり、教員ではない他の会計年度任用職員としての勤務でも、同一自治体であれば合算して社会保険の対象となります。
子どもと触れ合える時間が少ない
これはメリットの裏返しでもありますが、担当する仕事が限られている分子どもと関わる時間は少なくなってしまいます。
担任であれば、授業だけでなく休み時間に一緒に遊んだり、遠足や社会見学に行ったりもします。
運動会や音楽会などの行事を通して子どもの成長を感じられるのも、フルタイムで働く教員ならではの喜びでしょう。
こういった喜びを非常勤講師では感じにくいのは事実で、寂しく思う人もいるかもしれません。
何かを優先すると何かが犠牲になるのは当然なので、自分が何を優先させるかをしっかり考えて判断してください。
わたしの場合は、他のことにチャレンジしてみたい気持ちを優先しました。
まとめ:非常勤講師には時間的なメリットがある一方で、金銭的なデメリットもある。
非常勤講師には多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。
非常勤講師のメリット
・業務が少なく時間にゆとりのある生活を送ることができる
・副業ができる(営利企業等への従事制限がない)
・働く時間をコントロールできる
・正式に採用される前に経験が積める
非常勤講師のデメリット
・雇用が不安定
・常勤講師に比べると低収入
・社会保険に入れない場合もある
・子どもと触れ合える時間が少ない
「せっかくの公務員を退職するなんてもったいない」と言われることもありますし、他の収入がないと経済的には厳しいのも事実です。
ですが、「もっと自由な時間がほしい」「一歩引いた立場から教育に関わりたい」と思う方にはおすすめの働き方です。
メリットデメリットをよく考えて、自分に合った働き方を見つけてください。
今の働き方に満足していない人は、1度脱出してみるのもおもしろいですよ。